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最高裁判所第一小法廷 昭和59年(オ)691号 判決 1987年11月12日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告人菅沼志づ外五名の代理人山本祐子、同前田留里の上告理由第二並びに上告人菅沼愛子外二名の代理人宇津泰親の上告理由中被上告人水野誠道関係の第一点及び第二点について

不動産が譲渡担保の目的とされ、設定者から譲渡担保権者への所有権移転登記が経由された場合において、被担保債務の弁済等により譲渡担保権が消滅した後に目的不動産が譲渡担保権者から第三者に譲渡されたときは、右第三者がいわゆる背信的悪意者に当たる場合は格別、そうでない限り、譲渡担保設定者は、登記がなければ、その所有権を右第三者に対抗することができないものと解するのが相当である。これと同旨の見解に立ち、原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、第一審判決添付の目録(八)記載の土地の譲渡担保設定者である亡菅沼高雄の地位を相続により承継した上告人菅沼志づ外六名及び同目録(一五)記載の建物の譲渡担保設定者である上告人株式会社大和製作所は、譲渡担保権の消滅後に譲渡担保権者の訴外荒巻藤夫から右土地建物の譲渡を受けた被上告人水野誠道に対し、その所有権を対抗することができないものとした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

その余の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐藤哲郎 裁判官 角田禮次郎 裁判官 高島益郎 裁判官 大内恒夫 裁判官 四ツ谷 厳)

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